
PHPの脆弱性が見つかっても、それだけを理由にWordPressをやめる必要はありません。契約サーバーで必要な対策が済んでいて、WordPressの更新やバックアップも続けられるなら、今のブログを使い続けられます。
「WordPressは危ないから、EmDashや静的サイトへ移した方がいい」と聞くと、引っ越すべきか迷います。ただ、移行すると、記事の書き方だけでなく、更新や料金、トラブルへの対応も変わります。この記事では、レンタルサーバーでWordPressを使う個人ブログを想定して、それぞれの利点と手間を比べます。
情報の確認日は2026年10月24日です。PHPへの追加対策やサービスの仕様変更は、契約先の最新のお知らせで確認できます。
WordPressをやめる前に、まずサーバー会社の対応状況を確認する
レンタルサーバーでは、PHPの修正をサーバー会社が行う場合があります。契約先のお知らせにある「対象サービス」「対策が済んだか」「利用者側の作業はあるか」の3点を調べると、今のブログで必要な対応が分かります。

- 契約しているサービス名を調べる。同じ会社でも、レンタルサーバーとVPSでは管理を担当する人が違います。
- 契約先の公式サイトで、今回のPHPの脆弱性についてのお知らせを開く。
- 契約中のサービスと、使っているPHPの版が、対策済みの対象に含まれているかを見る。
- 利用者側の作業や追加案内を読む。不明な点は、サービス名とPHPのバージョンを添えてサポートに問い合わせる。
たとえばエックスサーバーは、10月23日の追記で、対象のレンタルサーバーに提供するPHP 5.6〜8.5への修正が完了したと案内しています。同社のVPSでは、利用者自身が対応する扱いです。このように、会社名が同じでも契約サービスによって作業は変わります。
古いPHPに今回の修正が入っていても、通常のサポートが延長されるわけではありません。古い版を使っている場合は、サポート中の版へ変更できるかも、今回の対策とは別に相談できます。
PHPのバージョンが分からないとき
WordPressの管理画面で「ツール」→「サイトヘルス」→「情報」→「サーバー」を開くと、PHPバージョンを確認できます。契約サーバーの管理画面にも表示されている場合があります。
サーバー会社によっては、バージョン番号を変えずに修正を加えることもあります。この画面の番号だけで対策済みかどうかは分からないため、契約先の案内と合わせて確認します。
問い合わせるときは、「このサービスで使っているPHPは、PHP2shellと、その後の追加案内に対応済みですか。自分で行う作業はありますか」と聞けば、必要な対応を確認できます。
今回のPHPの問題は、WordPressの更新だけでは解決しない
「PHP2shell」は、PHPで見つかった2件の脆弱性の通称です。条件によっては、ログインしていない第三者にサーバー上でプログラムを実行される恐れがあります。WordPressだけでなく、PHPを使うほかのサービスにも関係する問題です。
PHPは、サーバー上でWordPressを動かすために使われる言語です。WordPress本体とPHPは別のソフトなので、管理画面でWordPressを最新にしても、サーバー側のPHPまで同時に修正されるとは限りません。
10月21日に公開された修正版は、PHP 8.2.35、8.3.36、8.4.27、8.5.12です。10月23日には、特定の設定とアプリの処理が組み合わさる場合について、追加の案内も出ています。自分の環境で追加対応が必要かどうかも、契約先への確認に含めます。
まだ修正されていない場合は、移行先を探す間にも、現在のサイトへの対処が必要です。設定ファイルを自分で変更する前に、契約先や保守担当者へ、修正の予定と、それまでのアクセス制限・一時停止が必要かを相談してください。
WordPress・EmDash・静的サイトは何が違う?
WordPressとEmDashは、記事や画像を管理するCMSです。静的サイトは、あらかじめ作ったHTMLなどを読者へ届ける方式のことです。CMSの名前と、サイトを配信する方式が混ざりやすいので、ここでは分けて比べます。
| 運営方法 | 利点 | 管理や移行で必要になること |
|---|---|---|
| レンタルサーバー上のWordPress | 今の投稿画面・テーマ・プラグインを使い続けられる | PHPの対策状況、本体・テーマ・プラグインの更新、バックアップの確認 |
| EmDash | PHPを使わず、Astroで作ったサイトの記事を管理画面から編集できる | CMSの更新と再公開、データの保管・復旧、WordPressのデザインや機能の作り直し |
| 静的サイト | 公開部分でPHPやデータベースを動かさない構成にできる | 記事から公開ファイルを作る仕組み、検索・フォーム等の実装、元データの保管 |
Cloudflareは、サイトの配信やプログラムの実行環境を提供するサービスです。EmDashをCloudflareで動かす構成では、Workersがプログラムを実行し、D1に記事などのデータ、R2に画像などを保存します。EmDashにはNode.jsで動かす方法もあり、Cloudflare専用ではありません。
管理の手間は、CMSだけでなく契約内容でも変わります。WordPressでも、自分でサーバーを用意すればOSやPHPの管理が増えます。反対にEmDashでも、制作や保守を任せられれば、自分が行う作業は減ります。
EmDashに移れば、更新やセキュリティ管理は楽になる?
PHPを使わない環境へ完全に移せば、そのサイトでPHPを更新する作業はなくなります。EmDashには、設定によってプラグインを隔離して動かし、アクセスできる範囲を制限する仕組みもあります。PHPを使わずにサイトを作りたい人には利点です。
一方で、CMSや関連ソフトの更新、ログイン管理、バックアップは残ります。隔離の仕組みもすべてのプラグインに一律で働くわけではなく、形式や設定によって動作する範囲が異なります。
普段の記事編集と、CMS本体の更新は別の作業
EmDashでも、記事は管理画面から編集できます。Astroでサイトを作る人と、記事を書く人で作業を分けられるのは便利な点です。WordPressのテーマやプラグインをそのまま動かす仕組みではないため、今の見た目や機能を引き継ぐ部分は別に作ることになります。
CMS本体の更新では、更新ツールの実行、変更内容の確認、公開用ファイルの作成、サーバーへの反映、動作確認といった作業があります。データを変更する更新なら、失敗したときに戻せる準備も必要です。
これまでWordPressの投稿画面を中心に使ってきたなら、CMS本体の更新で初めて使う操作も出てきます。記事を1本書く操作と、CMSを更新して公開し直す操作の両方を試すと、移行後の作業量をつかめます。
長く運営するなら、更新が続いているか、困ったときに相談できるかも気になります。これはWordPressでもEmDashでも同じです。最近の更新履歴や問い合わせ先に加えて、別の仕組みへ移る方法も分かっていると、使い続けるかを判断する材料になります。
Cloudflareの料金は、使う機能によって変わる
Cloudflareでは、静的ファイルの配信と、プログラムの実行やデータ保存で料金の数え方が違います。EmDashを動かす場合は、記事を配信する部分だけでなく、CMSの処理やデータ保存に使うサービスも計算に含めます。
| 使う機能 | 確認する料金・上限 |
|---|---|
| 静的ファイルの配信 | PagesのFunctionsを呼び出さない静的配信は、リクエストが無料・無制限。ファイル数やビルド等の上限は別にある |
| Workersの処理 | 無料プランの上限、または有料プランの基本料金・処理の呼び出し回数・CPU使用時間 |
| D1のデータベース | 読み書きした行数と保存容量に無料枠がある。有料プランでは含まれる枠を超えると課金 |
| R2の画像等の保存 | 保存容量と読み書き等の操作回数。保存クラスによって無料枠や料金が違う |
2026年10月24日時点のWorkers有料プランは月額最低5米ドルです。基本料金には、標準で月間1,000万リクエストと3,000万CPUミリ秒が含まれ、それぞれの超過分に追加料金がかかります。
ここでいうリクエストは、Workerが処理を受け付ける回数で、記事のPVとは別です。CPUミリ秒は、プログラムがCPUを使った時間です。D1やR2の費用も別に計算するため、PVだけではブログ全体の月額は決まりません。
従量課金の費用を抑えるために、利用状況の確認や通知の設定もできます。予算アラートは設定額を超えたことを知らせるもので、その金額で請求を自動的に止める機能ではありません。Workersには1回の処理で使うCPU時間を制限する設定もありますが、これも全サービスの請求総額に上限を付けるものとは別です。
静的配信を中心にして無料枠で収まるなら、費用を抑えられる構成もあります。反対に、複数のサービスの使用量を追うのが負担なら、契約期間ごとの料金を把握しやすいレンタルサーバーの方が管理しやすいかもしれません。比較するときは、配信費用だけでなく、保守を頼む場合の費用も含めます。
EmDashをやめたくなったら、データを取り出せる?
現在のEmDashには、管理者が「Settings → Transfer」からサイトを書き出す機能があります。この操作でデータを取り出すために、SQLを直接操作する必要はありません。
書き出される「.emdash」ファイルは、記事や画像などを別のEmDash環境へ移すためのものです。WordPressへそのまま読み込める形式ではないため、戻す場合は記事の形式やURL、デザイン、機能を合わせ直す作業が残ります。別のCMSへ移るときにこうした調整が必要なのは、WordPressからの移行でも同じです。
また、このファイルにはユーザーアカウントやプラグインの設定・保存データなどは含まれません。障害から元のサイトを復旧するためのバックアップは、別に用意します。数記事で書き出しと取り込みを試すと、何を引き継げて、何を作り直すのかを確認できます。
今のWordPressを使い続ける利点と、残る管理作業
今のテーマやプラグインに不満がなく、投稿画面にも慣れているなら、それを使い続けられるのはWordPressに残る利点です。移行作業や新しい操作を覚える時間を、記事の執筆やリライトに使えます。
ただし、レンタルサーバーを契約しているだけで、ブログの管理がすべて済むわけではありません。WordPress本体・テーマ・プラグインの更新やバックアップを、誰がどこまで行う契約かによって、自分の作業も変わります。
- WordPress本体・テーマ・プラグインを更新し、提供元のサポート状況も確認しているか
- 使っていないプラグインや、不要な管理者アカウントが残っていないか
- データベースや画像・テーマなどのファイルをバックアップし、戻し方も分かっているか
- 不具合が起きたとき、契約先がどこまで対応するか分かるか
PHPの対策が済んでいても、管理画面のパスワードが漏れていれば別の問題が起こります。Chromeの警告が気になる場合は、パスワード漏洩警告の確認方法と変更する場所で、変更が必要なパスワードを調べられます。
静的サイトやEmDashが合う場合もある
公開するものが記事や固定ページ中心で、WordPressの機能をあまり使っていないなら、静的サイトへ移すメリットもあります。公開部分にPHPやデータベースを置かない構成なら、それらを狙う攻撃の経路を減らせます。検索やフォームを使う場合は、別の仕組みで用意します。
Astroでサイトを作りたい人や、その制作・保守を頼める人には、EmDashも候補です。PHPを使わず、記事の管理画面を保ちながらサイトを作れます。今のWordPressの何を変えたいのかがはっきりしていれば、移行するメリットも比べやすくなります。
WordPressを記事作成用に残し、公開部分だけを静的化する方法もあります。その場合は、残したWordPressの更新やアクセス制限も必要です。WordPressの手前にCloudflareを置くだけの場合は静的化とは違い、元のサーバーでPHPが動き続けます。
移行が気になるなら、数記事で試してから決める
移行を試すときは、今のブログを残したまま、別のテスト環境へ数記事を移すと比べやすくなります。文章を直す、画像を入れる、公開する、失敗したら戻す。こうした普段の作業まで試すと、見た目だけでは分からない使い勝手も分かります。
- 画像・表・リンク・ショートコードを含む記事が意図どおり表示されるか
- 新規投稿と過去記事の修正を、自分が無理なく続けられるか
- 検索・フォーム・広告・商品リンクなど、必要な機能を維持できるか
- 記事のURL、転送、検索エンジン向けの設定をどう引き継ぐか
- 料金の確認場所、バックアップ、更新失敗時の復旧手順が分かるか
- 別の環境へデータを出し、移行先で利用できるか
たとえば、商品リンク用のショートコードを使っている記事では、本文を移せても商品リンクが表示されないことがあります。よく使う機能を含む記事で試すと、移行後に作り直すものが見つかりやすくなります。
WordPressはそのまま、サーバーだけ乗り換える
今の契約先が必要な対策に対応できない、サポートに不満がある、といった場合は、WordPressを残してサーバーだけ移す方法もあります。移行先でも、PHPへの対応状況と、どこまで保守・サポートしてもらえるかを比べます。
エックスサーバーには、他社サーバーから記事・画像・テーマ・プラグインなどを移す「WordPress簡単移行」があります。対象となるデータをまとめて移せる機能です。
ConoHa WINGにも、他社サーバーから移す「WordPressかんたん移行」があります。本番の切り替え前にテストサイトを作り、移したブログがどう表示されるかを確かめられます。
どちらも移行機能には利用条件があり、対象外のデータや設定があります。ドメインの切り替えや、移行後の表示・動作確認も別に行います。料金を比べるときは、同じ契約期間で、初回の支払総額と更新時の料金を並べると違いが分かりやすくなります。
まとめ:対策を続けられるなら、WordPressのままでもよい
必要なPHPの対策が済み、WordPressの更新やバックアップも続けられるなら、今回の件を理由にWordPressをやめる必要はありません。まずは契約サービスの対応状況と、自分に残っている作業を確かめるところからです。
EmDashや静的サイトには、PHPを使わずに公開できる利点があります。一方、移行やその後の管理の手間は、構成や保守の頼み方で変わります。数記事で試すと、今のブログで困っていることが改善するか、普段の更新を無理なく続けられるかを、実際の作業で比べられます。